「引きこもりの家族が何を考えているかわからない」
「力になりたいけど心理状態がわからず、何をしたらいいかもわからない」
2023年の内閣府の調査によると、日本の引きこもりは推定146万人ともいわれていて、引きこもり当事者との接し方などに頭を悩ませる人も年々増えています。
そこで今回は、引きこもりの心理状態や引きこもりの子供への接し方・解決法について、それぞれ詳しく解説しています。
引きこもりを解決するためには、焦りは禁物です。まず当事者がどんな気持ちになっているのかを理解するところから始めましょう。
この記事をキッカケに理解が深まり、良好な家族関係を築く発端になれば幸いです。
\この記事のポイント/
- 引きこもり当事者は、働けないという罪悪感や失敗が怖いという不安に苛まれていることが多く、相談したくてもうまく言語化できないことが多い
- 働かなければいけないということは理解しているものの、心と体がついてこないことに悩んでいる
- 引きこもりの親は過保護・過干渉にならないよう適切な距離感を保ち、必要に応じて専門の支援機関に相談することが大切
引きこもりの心理状態とは?本人もわかっていない場合も
引きこもりの心理状態は、一人ひとりさまざまなケースが考えられます。
人間関係の挫折や失敗、学校でのいじめ、職場のパワハラ、親子間トラブルなど、辛い過去を経験していることも多く、引きこもることで自分を守っている状態ともいえるでしょう。
引きこもり当事者は気持ちを言語化することが苦手な人も多いため、「何を考えているかわからない」という人も少なくないと思いますが、本人も自覚できていないケースも珍しくありません。
ここからは、引きこもりが陥りやすい6つの心理状態について、それぞれ詳しく解説します。
- 「他人や社会が怖い」傷つきやすさと自信の欠如
- 「働かないといけない…」罪悪感と自己非難
- 「自分を理解されない」周囲への不信感と過敏さ
- 「失敗が怖い」優柔不断と行動できない状態
- 「誰にも相談できない」ためらう気持ち
- 「親が死んだら」と長期化したときの不安
「他人や社会が怖い」傷つきやすさと自信の欠如
引きこもっている人の多くは繊細な感性を持っていて、人よりも傷つきやすい傾向があります。
他人の何気ない言葉が気になったり、人が気にならないことを気にしてしまうことも多く、学校や社会で生きづらさを感じることも少なくありません。
また、「人と違う」ということから自信をなくしてしまい、自分の容姿に強い劣等感を抱えているケースもあります。
「今の自分を知られたくない」「人から非難されたくない」という心理状態から、引きこもらざるを得ない状況に陥ってしまっているのです。
「働かないといけない…」罪悪感と自己非難
引きこもり当事者のほとんどが、「働けずに引きこもっている自分」に強い罪悪感を抱えているケースが多いです。
- 働きに出なくちゃいけない
- 親に迷惑をかけてしまっている
- 外に出ることすらもままならない
そんな自分に毎日失望し、「自分はダメな人間なんだ」と自己非難を続けてしまいます。
自分は無価値な人間なんだという強い思い込みから「死にたい」という希死念慮が生まれてきたり、掃除・食事・入浴などを放棄するセルフネグレクトに至る可能性もあるでしょう。
本来であれば、安心して心と体をゆっくりと休める環境が必要な状態です。
しかし、強い罪悪感と自己非難によって、「安息すらも許さない」という心理状態に陥ってしまいます。
「自分を理解されない」周囲への不信感と過敏さ
引きこもり当事者を客観的に見ると、一人でゲームやアニメに没頭し、楽しんでいるように見えるかもしれません。
しかし、内心はあまり穏やかではなく、
- 引きこもりを家族はどう思っているのか
- 家にいることが迷惑なのではないか
- 働きに出て欲しいと思っているのでは
など、あれこれと考えを巡らせています。
家族の期待や心配、不安などを敏感に感じ取り、「私の気持ちをわかってくれる人はいない」と周囲に不信感を抱いていることも多いです。
現実と切り離された世界に没頭することでしか自分を守れないほど、神経過敏な状態になっているといえるでしょう。
「失敗が怖い」優柔不断と行動できない状態
引きこもりになると「働けない自分」を非難してしまい、自尊心や自己肯定感が大きく下がってしまいます。
その結果、自分の判断に自信を持つことができなくなり、物事の決断できない優柔不断な状態に…
さらに、引きこもりなどの辛い状況にある場合、思考力が低下することも多いため、間違った選択をすることが多くなる可能性もあります。
過去の経験やトラウマから「失敗は悪だ」という考えを持っている人も多く、自分の失敗を過剰に非難してしまい、行動することに恐怖を感じている人も少なくありません。
そのため、引きこもりから抜け出す行動を起こすことができなくなり、長期化してしまうケースが多いと考えられます。
「誰にも相談できない」ためらう気持ち
引きこもり当事者にとって、相談は容易なことではありません。
今の状態を抜け出したいとは思っているけれど、「自分は何がしたいのかわからない」という人がほとんどで、何からどう話せばいいのか言語化が難しいためです。
「相談したからといって解決するかわからない」という懐疑的な気持ちがある場合も多いでしょう。
自分のことを信頼できない人は、他人のことも信頼できません。
自分の悩みを素直に話したところで「そんな程度だったのか」と否定される恐怖を感じてしまい、誰にも相談できない精神状態を作り上げてしまいます。
「親が死んだら」と長期化したときの不安
引きこもり当事者が40〜50代であれば、「親が死んだらどうしよう」という不安を抱えていることも多くあります。
80代以上の親が50代の引きこもりの子どもの面倒を見る「8050(はちまる・ごうまる)問題」という社会問題として認知されてきているケースです。
引きこもりが長期化すれば家族関係の悪化に繋がり、親子間のコミュニケーションが失われます。
- 親に介護が必要になったらどうするのか?
- 家庭の経済状況や資産はどのくらいあるのか?
- 親が死んだ後の葬儀や保険、持ち家はどうしたらいいのか?
このような話し合いができていないケースも多く、引きこもり当事者は不安を抱えています。
自立できていない状況で親が死んだら大変なことになるということも理解しているものの、自ら話し合いの場を設ける行動力はなく、不安がさらに大きくなるという悪循環の中にいるのです。
親ができる引きこもりの子供への接し方・解決方法
引きこもりは、これまで育った環境や職場・学校・人間関係でのトラブルなど、さまざまなものが蓄積した結果であり、ある日突然解決する!ということはありません。
傷ついてしまった自尊心や自己肯定感を取り戻し、自立した生活を送れるようにしていくためには、安心した家庭環境を作ることが大切です。
ここからは、親ができる引きこもりの子供への接し方・解決方法について、4つのポイントを解説します。
取り入れやすいものから実践して、引きこもりに悩む家族の手助けになれば幸いです。
引きこもりの精神状態を理解して受け入れる
「なぜ引きこもりになってしまったのか」原因追求ばかりしていると、本人は責められていると感じて逆効果になる可能性があります。
まずは、
- 決して怠けているわけではないこと
- 自立が必要だとわかっていること
- 多くの葛藤があるということ
このような引きこもりの精神状態を理解することから始めましょう。
人によっては、「引きこもりは親の責任だ」と自分のことを責めてしまう人もいますが、このような親の価値観が長期化の原因になる場合があります。
親であるあなたも、時には誰かに相談したり引きこもりの支援機関を頼ることも大切です。
お互いが快適に過ごせるように、問題を抱え込みすぎないことを覚えておいてくださいね。
将来や仕事の話はNG!日常的な挨拶や軽い会話で距離を縮める
「早く働きに出ることが正しい!」という価値観を持っていると、言葉の端々に「働いてほしい」という気持ちが表れてしまうもの。
しかし、それでは引きこもり当事者の精神状態とのすれ違いが生じ、解決が遠のいてしまいます。
「おはよう」「おやすみ」などの挨拶や、
- ◯時に帰ってくるね
- 今日は寒くなるよ
- 晩御飯なに食べたい?
このような日常的な声かけをおこなうだけで、当事者が「ここにいてもいい」という安心感を持つことにつながっていきます。
最初は返事が返ってこないこともあるかもしれませんが、あまり気にしなくいこともポイント。
仕事や将来のこと、比較になるような同世代の友人の話は避け、「家庭は安心できる場所なんだ」と思える環境を作ることを心がけましょう。
過保護・過干渉を避ける
引きこもり当事者に対して過保護・過干渉になりすぎるほど、引きこもりが長期化する傾向があります。
- 働かなくても困らないほどの大金を渡す
- 食事を毎食部屋まで運ぶ
- 部屋の掃除や洗濯をすべて親がおこなう
- 将来のことや仕事についてアドバイスしすぎる
- 「やればできる子」と思い、過度な期待を寄せている
このような親の態度や言動は子どもの自主性を奪うことに繋がります。
引きこもっていても常に快適な環境が整い、お金にも苦労しない状態が続くのであれば、わざわざ辛い思いをして外で働こうとは思いませんよね。
親にもしものことがあった場合も「生活保護を頼ればいい」という安易な考えになるキッカケにもなり、お互いにとってメリットのある結果にはなりません。
引きこもりの解決を望むのであれば、過保護・過干渉にならないように適切な距離を保ちつつ、引きこもり当事者を見守ることが大切になってきます。
引きこもり支援に相談する
引きこもりは長期化すればするほど、解決が難しくなっていきます。
当事者との接し方や距離の取り方について一人で頭を抱える前に、引きこもり支援を得意とする相談窓口や支援機関に相談することも視野に入れましょう。
引きこもり支援にはさまざまなものがあり、厚生労働省が運営する「ひきこもり地域支援センター」やNPO法人が運営する民間の支援機関も数多くあります。
民間の支援機関のなかには、
- フリースペースなど居場所を提供している「通所型」
- 宿泊施設に入所して共同生活を送る「宿泊型」
- スタッフが自宅を訪ねる「訪問型」
このような形態が分かれていて、本人の希望や引きこもりのレベルに合わせた支援サービスを受けられます。
らいさぽセンターは、引きこもり・ニート・不登校児を対象とした自立支援のための全寮制施設です。
他の就労支援サービスと異なり、施設内の工場などで実際に働いて給与をもらいながら生活できるため、当事者の自尊心や自信を育むことができます。
快適な個室でプライベートスペースは確保されつつ、栄養バランスの取れた食事によって心身ともにサポートされるため、健康と快適な生活の両立が可能です。
電話やLINE、メールでの無料相談にも対応しているので、一人で抱え込まずに気軽に相談することから始めてみましょう。
引きこもりの心理状態と接し方:まとめ
今回は、引きこもりの心理状態と接し方について、それぞれ詳しく解説してきましたがいかがだったでしょうか?
本記事の内容を簡単におさらいします。
- 引きこもり当事者は、働けないという罪悪感や失敗が怖いという不安に苛まれていることが多く、相談したくてもうまく言語化できないことが多い
- 働かなければいけないということは理解しているものの、心と体がついてこないことに悩んでいる
- 引きこもりの親は過保護・過干渉にならないよう適切な距離感を保ち、必要に応じて専門の支援機関に相談することが大切
引きこもりは見守るだけで解決することは難しく、長引けば長引くほど解決が難しくなってしまいます。
中高年になってから引きこもりになった場合、親の介護や資産管理などの不安も重なるため、長期化しやすいことが特徴です。
だからこそ、当事者や家族だけで抱え込むのではなく、専門の支援機関に相談することが大切になってきます。
引きこもり当事者との関係も改善しつつ、お互いが笑顔で過ごせる未来に向けて一歩踏み出していきましょう。